子どもの貧困について(湯浅誠氏の講演会より)

昨年末、湯浅誠さんの講演会が狭山市市民交流センターであったので聴きにいった。2時間にも渡る講演会だったが、聴衆をダレさせず飽きさせない湯浅さんの話の上手さに舌を巻いた。


湯浅さんのことをテレビや著書のイメージで真面目な人だと思い込んでいたが、話の合間にちょくちょく笑いを取ったりしたのが意外だった。

 

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以下、湯浅さんの話で気になったことを箇条書きした。

 

・6人に1人が子どもの貧困→そんなに多いか? と思う人が多数
・貧困の第一の特徴は「見えにくい」→世界的な傾向
・8割方のホームレスはぱっと見では分からない
・子どもの貧困率は16.3%で全体のそれは16.1%である。最近、逆転した
・子どもの貧困率が高くなったというのは、つまり30代40代の子どもをもつ家庭の経済力が厳しくなったということ

 

・子育て世帯の失業率は、0.4%である。つまり日本は働いても貧困。ワーキングプア大国
・日本は、1人親世帯では世界一就労率が高い(母子家庭の貧困率は50%)
・保育園問題。働くには子どもを預けなくてはいけない。しかし保育園は働いている人を優先する。結局、働きたくても働けない

 

・子どもの貧困問題について話をすると「資本主義だから仕方がない」という反応が多い
デンマークの子どもの貧困率は5%だが、デンマーク社会主義なんですか?
・英国はブレア政権のとき「2020年までに子どもの貧困を撲滅する」と宣言。劇的に子どもの貧困率が下がった。英国は社会主義なんですか?

 

・私の講演会に来た皆さんがこういう話を広めてほしい。私の話を聴いてうんうん頷いても貧困について知る人は1人も増えない。だって、皆さんは金曜の夜なのにわざわざ私の話を聴きに来るくらいの人たちだからすぐに理解しちゃう(笑)。

私ができるのは皆さんが他の人に話すネタを提供すること。家に帰るまでが遠足と言いますが、他の人に話すまでが講演会と思って下さい

 

・子どもの貧困について「昔のほうが大変だった」という反応も多い。「修学旅行にいけない」→死なないだろという反応。「大学に通えない」→オレは中卒で働いてきたという反応


・昔のほうが大変というのはその通りだが、だからといって子どもの貧困は放っておいていいのか? 何のためにわざわざOECD加盟国の34カ国がデータを出すのか

 

社会的排除とは? 例えば自殺。加害者がはっきりしないことが多い(電通ははっきりしているが…)
・介護離職→年間10万人が介護のために仕事を辞める。これも社会的排除。つまり社会の仕組みでそうならざるを得ない
社会的排除は、ヨーロッパだと治安の問題として出てくる。日本の場合は、殺すなら誰でもよかったという形で出てくる。厳しく罰すればこういうのはなくなるのか。


・貧困とは、貧乏と孤立のこと(大人も子どもも)
・貧困は、交流や社交(冠婚葬祭)のときに如実に出てくる→孤立

 

・子どもの場合は、修学旅行に行けないときなど。子どもだから「お金がないから行けない」とは言えず、「あんなところに言って何が楽しいのか」と憎まれ口を叩いて周囲とぶつかり修学旅行の思い出を共有できず孤立


・子どもの貧困についてどうすればいいのか。国がこうすればいいというのはどこか自分事ではない
・ここにいる、ほとんどの人が狭山市民だと思うのですが、狭山市の子どもの貧困率を知っていますか?
・1700ちょっとある地方自治体の中で、子どもの貧困率を調べようとしているところは60に満たない


・皆さん、たとえば狭山市市議会議員に「狭山市の子どもの貧困率はどれくらいですか?」と聞いてみたらどうでしょうか。議会に取り上げてくれるかもしれません

・埼玉県が2009年に貧困家庭の子どもたちを対象に学習支援の先鞭をつけた


・子ども食堂というのが出てきた。こういうエピソードがある。子ども食堂に来た子どもが「鍋をつつくって本当にあるんだね」と言った。その子どもは、鍋をつつくというのがテレビの中だけでおこなわれている一種のファンタジーなものだと思っていたらしい。

こういう体験が大事。子どもが何に反応するかわからない。だから、いろいろ体験させる。サラリーマンに会ったこともない子どもがいるかもしれない。大学生に会ったこともない子どもがいるかもしれない。

 

・「いるだけ支援」→大人がいるだけで子どもが勝手に反応する。だから支援と聞いて難しく考える必要はない
・「こんな中途半端な気持ちで支援していいだろうかという真面目な人がいます」→大丈夫です。そんな人たくさんいます。合わないと思ったら別のところに行けばいいんです。子どもたちは気にしていません


・子どもの貧困に対して、「お金も出せない」「勉強も教えられない」「子ども食堂のようなところに行くのも無理」という人たちも多いと思います。それだったら地域の網の目になって下さい。できれば周りを巻き込んで。皆さんがセーフティーネットの一部になって下さい。


佐賀県武雄市というのがある。ボランティア登録したおじさん・おばさんが学校に来て子どものテストに○つけをする。今まで知らない者同士がそれを通じて顔なじみになって地域で会ってもお互い固有名詞で呼び合えるようになった

 

・東京都豊島区では、「おはようバナナ」という運動がある。子どもたちの登校に合わせてバナナを渡す。「朝ご飯、食べていない人!」と呼びかけても恥ずかしくて子どもは手を挙げられない。だから、みんなにバナナを配る。その中にはご飯もまともに食べられない子どもたちがいるかもしれないから

 

以上、湯浅誠さんの講演会のまとめ。湯浅さんの著書はいくつか拝読させていただいたことはあったが、実際本人から話を聞くと違う。本のほうがもちろん内容が充実しているのだろうが講演会のほうが心に響く。

 

質疑応答のときに狭山市市議会議員の人が湯浅さんに質問した。質問の内容がちょっと漠然としていて理解できなかったが、「狭山市の子どもの貧困率は13%です」と言っていたのだけ理解できた。帰宅後、この数字が本当かどうか調べて見た。1時間以上かけてようやくそれらしい数字がわかった。

 

狭山市議会の「平成27年12月 定例会(第4回)」の記事録にそれらしきものが残っていた。

 

狭山市の)福祉子ども部長によると、国と同じ基準で貧困率を把握することは難しいので児童扶養手当支給対象児童の支給率と就学援助認定者数などを出して子どもの貧困を説明していた。

 

子どもの貧困率を出すのに国の基準は使えないらしい。なぜなのだろう?


地方自治体では子どもの貧困率の算出方法はどうなっているのだろうか。基準がばらばらだったら比較できない。やろうと思えば、自分の自治体の子どもの貧困率を低くみせることだって可能になってしまう。基準の統一化を測らないといけないのではないだろうか。

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